消費税の軽減税率制度の概要と対策 - 税務コラム | 冨永正見税理士事務所

消費税の軽減税率制度の概要と対策

目次

国税庁は過去2度延期された消費税率8%から10%への引き上げを飲食料品等への軽減税率制度 (飲食料品等の軽減税率対象品目の消費税率が10%から8%に軽減)の導入と併せて、 2019年10月1日から施行します。改正消費税の概要から軽減税率制度の対応まで解説します。

消費税の軽減税率制度の概要と対策

2019年05月28日

改正消費税の概要

2019年10月1日以降は、標準税率(10%)・軽減税率(8%)・経過措置による税率(8%) の3種類の税率を帳簿等により管理する必要があります。また、請求書やレシートは区分記載請求書等保存方式に 対応しなければならないため、レジや請求書発行システムなどの改修に早い段階で取り組む必要があります。

改正消費税のスケジュール
改正消費税のスケジュール
10月1日以降に必要となる区分経理

軽減税率制度の対象品目を販売又は仕入する課税事業者は、納税する消費税額等を計算するため原則として税率10%が 適用される物品税率8%が適用される物品レジや販売管理 システム・総勘定元帳の売上勘定や仕入勘定などの帳簿書類等において区分( 軽減税率制度の対象になる品目に記号を付し、その記号が軽減税率制度の対象になる品目であることを示す旨の記載をするか、 税率区分欄を設け「8%」と記載するなど)する必要があります。

尚、軽減税率制度の8%と経過措置の8%では、消費税と地方消費税の内訳が異なるため区分する必要があります。

中小事業者の特例

2019年10月1日から一定期間、売上又は仕入を軽減税率と標準税率とに区分することが困難な中小事業者に対して、 売上税額又は仕入税額の計算の特例が設けられています。

適用税率による物品の区分について
適用税率による物品の区分について

区分記載請求書等保存方式

また、軽減税率制度の対象品目を販売する事業者は免税事業者も含めて 区分記載請求書発行が求められ、軽減税率制度の対象品目を仕入れる事業者で 仕入税額控除の適用を受けるためには上記区分経理に応じた帳簿のほか区分記載請求書の 保存が必要になります。

区分記載請求書の記載例
区分記載請求書の記載例

軽減税率制度の対象品目

軽減税率(8%)の対象になる品目は、食品表示法に規定する飲食料品及び 定期購読契約に基づき週に2回以上発行される新聞(電子書籍を除く)。

飲食料品に含まれるもの
  • 飲食料品の販売に付帯する通常必要な包装材等
  • 添加物
  • 料理のテイクアウト(持ち帰りのための容器に入れ、又は包装を施して 行う飲食料品の譲渡)、出前、宅配等
  • 一定の一体資産(玩具付きの菓子など飲食料品とそれ以外のものがあらかじめ一体となって 販売されるもので、一定のもののうち税抜価額が1万円以下で飲食料品部分の価額が全体の3分の2以上であるもの)
  • 有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供、学校給食等
飲食料品から除かれるもの
  • 酒類(酒税法に規定する酒類)
  • 外食(飲食に用いられる設備のある場所で顧客に飲食させるサービス)、 ケータリング・出張料理等(顧客が指定した場所で行う役務を伴う飲食料品の提供)
  • 医薬品、医薬部外品、再生医療等製品
軽減税率制度対象品目
軽減税率制度の対象品目(政府広報オンラインより引用)

事業者ごとの影響

飲食料品の販売がある事業者の場合

飲食料品の卸売業・スーパーやコンビニ・生鮮食品や加工食品の小売業者・外食業者などは、区分記載請求書等の 発行と交付に対応する必要があり、その売上高や仕入高に軽減税率制度 が適用される品目の取引額が集計されることになります。

損益計算書の各勘定科目に適用される消費税率
損益計算書の各勘定科目に適用される消費税率
飲食料品の販売がない事業者の場合

飲食料品の販売や仕入がない製造業、卸売業又は小売業・建設業・不動産業などは、区分記載請求書等の 発行と交付の必要はなく(これまでと同様の請求書の記載を継続)、その売上高や仕入高に軽減税率制度 対象品目の取引額が集計されることはありませんが、例えば贈答する飲食料品の購入や 会議のお弁当代・新聞の購読費等が若干生じるため、 帳簿記載において区分することが必要 になります。

免税事業者の場合

免税事業者は、消費税の申告・納税がありませんので、軽減税率制度について意識しなくてもいいのではないかと思われる かもしれません。しかし課税事業者が免税事業者からの仕入について仕入税額控除の適用を受けるためには、区分 記載請求書等の保存が必要になります。そのため免税事業者が課税事業者と取引を行う場合、相手方から 区分記載請求書の交付が求められる場合があります。

免税事業者も早期に区分記載請求書の発行・交付への対応について検討することが望まれます。

軽減税率対策補助金の活用

消費税の複数税率に対応するためレジや販売管理システム・会計システムを改修する必要があり、早期に対応することが望まれます。 中小企業や小規模事業者等(免税事業者を含む)がレジや受発注システムの改修や入替を行う場合に、 それらの経費の一部を補助する「軽減税率対策補助金」があります。

A型・複数税率対応レジの導入支援

軽減税率対象品目を将来に渡り継続的に販売するため、複数税率対応レジ又は区分記載請求書等保存方式に対応した 請求書等を発行する機械の導入・改修する事業者が使える補助金です。

B型・受発注システムの改修支援

軽減税率対象品目を将来に渡り継続的に取扱うため、電子的受発注システムの改修・入替する事業者が使える補助金です。

C型・請求書管理システムの改修支援

軽減税率に対応するために必要となる区分記載請求書等保存方式に対応した請求書管理システムの導入・改修を行う 事業者が使える補助金です。

詳細は中小企業庁の軽減税率対策補助金のサイトをご覧ください。

軽減税率対策補助金チラシ
軽減税率対策補助金チラシ

参考サイト

  1. 軽減税率制度とは(リーフレット等)」国税庁
  2. 消費税の軽減税率制度について」国税庁
  3. 消費税軽減税率制度の手引き」国税庁
  4. 消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」国税庁
  5. 特集-消費税の軽減税率制度」政府広報オンライン
  6. 消費税の軽減税率制度等に関する資料」財務省
  7. 申請者の皆様へ|軽減税率対策補助金」中小企業庁