養子縁組による相続税対策の留意点
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即効性のある相続税対策の一つとして養子縁組があります。 養子は、具体的な血縁とは無関係に本人の子として扱われ、実子も養子も同じ相続分を有し、かつ遺留分も認められます。 そのため、安易な養子縁組が相続争いの原因となることもあります。 そこで、養子縁組による相続対策を行う場合の効果や留意点などについて解説します。
養子縁組による相続税対策の留意点
2015年04月23日
相続対策で行われる養子縁組とは
相続対策で行われる養子縁組は、普通養子縁組 [1]で、 養子は直系卑属(孫やひ孫)、子の配偶者、兄弟姉妹の子(銘や甥)、又は弟や妹であることが多いと思われます。 未成年の者を養子縁組にする場合には、養子の年齢が15歳未満の場合には 法定代理人(通常は実父)の承諾が必要ですが、 15歳以上の子は単独で養子になる能力が有るとされています。 しかし、いずれの場合においても、原則として家庭裁判所の許可が必要です。
但し、自分及び 配偶者の子や 孫を養子縁組する場合には、 たとえ未成年であっても裁判所の許可は不要です。 そのため、祖父母が15歳居所の未成年の孫と養子縁組を行う場合は、裁判所の許可もいらず法定代理人の承諾も必要ない事になります。
養子は、縁組の日から養親の嫡出子 としての身分を取得することになり、実の親子と同じ関係が生じます。 民法上、養子の数には制限がありませんので、 何人でも養子にすることができます。
ただし、尊属(叔父、叔母)又は 年長者を養子とすることは禁止されています。そのため、 双子の兄・姉が弟・妹を養子にすることも可能です。
また、養子縁組を行うと、養子は養親の氏を称することになるため、外孫等を養子にする場合は注意が必要です。 しかし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻による氏を名乗ることとされていますので、養子縁組による改姓の 必要はありません。
普通養子 | 特別養子 | |
養親の制限 | 成人である者 | 満25歳以上の夫婦(一方が25歳未満の場合は、その者が20歳以上)で共に養親 |
養子の制限 | 養親より年少者 | 原則として6歳未満 |
縁組の手続き | 養子が未成年者でなければ当事者の届出のみ | 家庭裁判所の審判が必要 |
実親等の同意 | 養子が15歳未満のときは法定代理人が承諾 | 実父母の同意が必要 |
親子関係 | 実方の親族関係は継続 | 実方との親族関係は終了する。親族関係の終了を明らかにするため「特別養子縁組」である旨記載される |
戸籍の記載 | 養子と明記される | 「養子」でなく「長男」「長女」等と身分事項欄に「○年○月○日民法第817条の2による裁判確定」と記載される |
離縁 | 当事者の狭義で可能、養子・養親いずれでも訴え提起可能 | 改訂裁判所の審判が必要・養親からの請求不可 |
養子縁組の手続き
養子縁組届は、各市区町村役場に備え付けられており、だれでもに届出書を作成することが出来ます。 養子縁組届出書には、養子になる人、 養親になる人、 証人(養子縁組の事実を知っている20歳以上の人であればだれでも可) 2名の署名押印等が必要です。 この場合に押印する印鑑は認め印でも問題ありませんが、養子縁組という重要事項に使用する 印鑑なので、後日の紛争の備えとして、できるだけ実印を使用することを奨励します。
養子縁組による税効果
相続対策や相続等の計算において、養子縁組は届け出たその日から効力が発生することから、 即効性のある対策といえます。養子縁組により得られる効果で主なものは次の通りです。
- 遺産にかかる基礎控除額の計算
- 相続税の総額を計算する場合の累進税率の緩和
- 生命保険金等・退職手当金等の非課税限度額の計算
相続税の総額を計算する場合に課税価格の合計額から控除することができる基礎控除額は、 「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されるため、 養子縁組により法定相続人が増えることで 基礎控除額も増加することになります。
相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分に従って分けたものとみなした場合における 各取得金額に累進税率を適用して計算します。従って、養子縁組により法定相続人が増えることで、 適用される累進税率が低くなる可能性があります。
上記の設例の場合、父が養子縁組をしていれば、第一次相続において1,050万円、第二相続では2,010万円、 合計で3,060万円もの相続税が軽減されます。
相続人が受け取った生命保険金等及び退職手当金等については、それぞれ「500万円×法定相続人の数」 まで非課税とされています。養子縁組により法定相続人が増えることで非課税限度額も増加することとなります。
ただし、上記1から3の規定については法定相続人の数に算入する養子の数には制限があり、 被相続人に実子がいる場合は一人まで、 被相続人に実子がいない場合は二人まで、となっています。
また、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、 その原因となる養子の数は上記の養子の数には含めることが出来ません。
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